去年の秋ごろに自家繁殖させた個体はその後もすくすく成長し、今や
直径20㎝以上を越えるようになってきました。少し前までは小さい水槽に入れていたためそこまで大きくなることはありませんでしたが…90㎝水槽に入れたとたんに急成長!魚でも同じような現象があるのですが、彼らもそれと同じく、
水槽の大きさに合わせて自身の成長をコントロールさせていたようです。
●ミズクラゲの卵
【保育嚢に何やら白いものが…】
異変に気がついたのは二日程前。ミズクラゲの口腕付近にある
保育嚢(ほいくのう)が何やら茶色く色付いている…そう思ってよく観察したところ、それは
卵(この時はすでにプラヌラ)でした。
ポリプを得るためには欠かせない卵…しかし、残念ながらこの卵は使えません。それにはちゃんと訳があります。
中央の花びらのような箇所の縁が茶色い
【ARCADIAのクラゲは、採集した卵を孵化・成長させたもの】
元来、「Jelly fish farm ARCADIA」のクラゲ達はそのほとんどが
自然界で採集した卵から発生したものです。採集した卵はその後孵化し、プラヌラとしてしばらく泳ぎ回ったあと壁に活着、ポリプとなります。それからは
ポリプの培養に移行。そして最終的には、正式な「クラゲ」になるまで成長させ、送り出しています。
その過程の中では今回のように、
繁殖個体どうして有性生殖行い、卵をもつなんてことも少なからず起こります。でも、その卵は使いません。わざわざ毎年海に卵を探しに行きます。それは、少しでも丈夫で美しいクラゲに育てるあげるためにも必要なことです。
【遺伝子が濃くなると貧弱な奇形個体が生まれやすい!?】
同じ遺伝子をもつ生物を交配させ続けると、奇形が生まれてしまう可能性が高まります。これはクラゲだけではなく、全ての生物に言えることです。しかし、
クラゲは有性生殖だけでなく無性生殖も行います(世代交代)。卵を持つためには相手が必要(有性生殖)ですが、その卵から生まれ形成されたポリプは自信をコピー(無性生殖)し増えるのです。つまり、有性生殖は別の遺伝子をもった個体とでなければ奇形が生まれてしまう恐れがあるけれど、無性生殖(ポリプ)の場合にはその心配はありません。あまりに長期的な場合はわかりませんが…。
このため、同じ遺伝子同士(同じポリプ同士)の交配によって生まれた今回の卵は残念ながら使えません。必ずしも奇形が生まれるというわけではないのですが、美しい個体に育て上げるためにも、少しでも心配のあることは排除していく必要があるでしょう。
【回収してみたら、すでにプラヌラに…】
「
卵はもう少し白かったはず…」と思いながらも回収し、ビーカーに入れたところ…やはり、もうすでにプラヌラになってしまっていました。
卵と違い、プラヌラは自ら動きます。
卵は親の保育嚢で孵化し、その後プラヌラとして海を漂います。大体この期間は2~3日程度で、
岩などにくっついたプラヌラはやがてポリプとなります。
恐らくあと数日でこのビーカー内はポリプだらけになってしまうでしょう…面白そうなので、しばらく様子を見てみたいと思います。